間伐を行う拠点になっている、兵庫県丹波市のシェアビレッジにツリーハウスを建てるプロジェクトがはじまりました。
しかも、ただのツリーハウスではなくて「和室」
桂離宮の図面を参考に建てられるので、純日本建築のツリーハウスが完成する予定なんです。
完成したら、宿泊施設として利用されるとのこと。
トイレも併設予定だから、木の上での生活も夢じゃないということで、このプロジェクトに、森の仲間たちも興味しんしんのようですよ。
前編:なんでツリーハウスを作るの?
チョッキ
なあ、にしけん!ここにツリーハウスが建つって本当なの?
本当よ、2021年5月から実際にツリーハウスをみんなで作り始めるんよ。
しかも今回は、日本人ならではの「和室」
図面は、17世紀に建てられて日本庭園として最高の名園と呼ばれている桂離宮を参考にするんじゃわ!
チョッキ
なんか別に、すごさがわからないかも。
そ、そうじゃいの〜(笑)
1番の魅力は、日本の建築様式っちゅうんは、昔からの知恵がよけぇ詰まっとるっちゅうところ。
例えば、アメリカではハリケーンがやってくる。それで家が飛ばされてしまってもまた建てればいい。じゃけアメリカでは、安く簡単に作れる家造りが発展してきた。
じゃけど、日本では地震とか台風がくるじゃろ?
アメリカとはまた違う環境に対して長持ちする家造りが発展してきたんじゃわ。
実際に、日本最古の建物と言われる法隆寺は1000年以上も現存しちょるわいね。
日本建築でメインとして使われる檜(ひのき)は、粘るし強い。
しかも伐り倒してからが強いらしくて、200年間強度を増し続けるとのこと。その檜を ”組む” ことによって家全体が作られているから、いざ地震が起きた時にすぐ崩れたりしない。
それに日本って高温多湿で、木にとっては辛い環境じゃろ?
どうしても腐ったり、白蟻にやられたりしてしまうんじゃが、そんな時はそこの部分だけ木を継ぎ直して修復が可能だったりもできる。
そんな風に、日本には日本のための家作りが存在していて、それを作ってきた先人の知恵と技術を、ツリーハウスを建てながら学ぶことができるのが今回のプロジェクトの肝なんよ。
チョッキ
でもさ、今回のツリーハウスは別に1000年も持たなくて良いじゃない〜
そうかもしれんね。今回のツリーハウスは “豊かな森を1000年続かせたい” というそのシンボルとして作るけぇね、森が豊かに続いてくれさえすれば、もしかしたらツリーハウス自体は1000年続かなくても良いかもしれん。
でもね、もしかしたら建物も1000年続いたほうが、森も1000年大事にされるかもしれないと思った出来事があったんよ。
僕は、ある日小さな社(やしろ)を見つけた。
でもその神社は少し荒れていて、ふと見渡すと、神社の裏の森も荒れていた。
そのときに「森が荒れているから、神社も荒れてしまうんだ」ってことを感じたのよね。
逆に、大事に手入れされている神社って、その周りの森までキレイにされとる。
きっと、木で作られた社を掃除して、木から落ちた枯れ葉を集める内に、もっと光がさすように枝を切ろうかな、なんてすぐ側にある森のことが気になり始めてきれいにしようかなって気持ちが出てくると思うんじゃいの。
つまり神社は森と表裏一体で、「人間と自然を繋ぐシンボル」になるんじゃないかなと実感したんよ。
チョッキ
なら神社ってのは、森の入り口みたいだな。
そうそう。もちろん今回作るのは「神社」ではない。
でも、神社さながら世代を超えて地域で大事にされ続ける建物を作っていきたいなと思っとるんよ。
築100年はゆうに経つ古民家に訪れた時のことなんじゃけどね、「この古民家は、裏の森から伐った木を使って建てられたんだよ」って、代々古民家お付きの大工であるおじいちゃんがお話を聞かせてくれたんよ。
この古民家っていうのが本当に空気感がよくて、建てられて100年以上経っているのにすごいキレイなんじゃわ。
遡ること、そのおじいちゃんの祖父の時代。所有する裏の森から木を伐りだして建てられたそのお家。
そのお家は、地域の方々が集まって仕事をする場所として大切に使われてきたんじゃって。
今ではもう誰も住まなくなってしまったんじゃけど、そうやって大切にしている姿を見てきた子供や孫世代もその想いを引き継いで、空気の入れ替えや掃除だけでもと、地域の人とそのお家をずっと大切に守ってきたんじゃって。
実際に建物を作った人がおらんくなっても、建物が作られた当時の話を伝え聞いたり、親や地域の人が大切にしている姿を見ることで、”建物を大切にする気持ち” は世代が変わっても受け継がれていったんよね。
じゃけぇなんじゃろうね、僕がその古民家を訪れたときも、良い雰囲気じゃの、キレイな建物じゃの、気持ちええ場所じゃのって感じることができたんだと思う。
これって、すごいじゃろ!!
その地域の森の木で作られたみんなの建物を、地域の人たちみんなで大切に守っていく。今後、建て替えをするときもその森から木を伐りだし、修繕し、繋いでいく。
このツリーハウスが「人間と自然を繋ぐシンボル」としてみんなに愛され続けていけば、森も豊かなまま1000年続けさせることができる。
—–
数百年後の未来、僕たちの子孫がいう。
2000年代初頭、災害が頻発する日本で立ち上がった人たちがいた。
日本の森を、そして日本を続けていくために、
みんなで建てたシンボル。
それが「きらめ樹間伐ツリーハウス」
みんなで森に入り、間伐し、
伐りだしてきた木材を使って、
みんなが集まって、
みんながお金を出し合って建てた建物。
あのツリーハウスがあったから、
森のことが日本中に広まり、日本が変わった。
それを忘れないようにするために
森を守ろう。
森を作ろう。
次に繋いでいこう。
—–
そのために、今みんなでツリーハウスを建てたいんよ。
チョッキ
にしけんにしてはええ話やん。
ほんで、作られたツリーハウスは、誰が住むの?
ツリーハウスは、宿泊施設になる予定よ。
じゃけぇ、シェアビレッジに訪れた人なら誰でも泊まれるようになる。
ツリーハウスにはトイレが併設されとるけぇ、憧れの木の上の生活だってできるんよ。
でも、何よりも大事なんは、このツリーハウスが防災の建物でもあるっちゅうこと。
実はこのシェアビレッジは過去3回、水害に見舞われとるんよ。
裏の山の土砂崩れが原因で、大量の水がシェアビレッジに流れ込んできたこともある。
もちろん今は水路の整備などの対策を施したから、命の危険にさらされる可能性は低いんじゃが、でも、絶対はないじゃろ。
現在シェアビレッジにはオーナーのタケル君一家に、住民が数人住んでいるんじゃが、もし再び水害が起こってしまったときの避難場所となる、というのもツリーハウスが担う役割の1つなんよね。
チョッキ
森を想うシンボルでもあって、避難場所にもなるか〜
ツリーハウスさん、大活躍だね!
後編:なんでみんなでツリーハウスを作るの?
チョッキ
でもさ、なんでみんなで作る必要があるの?
別に1人の大工さんでも作れるは作れるんでしょ?
そうじゃね、今回大工としてツリーハウス建築の中心になってくれるタケルくんなら、1人でも十分ツリーハウスを作れると思う。
じゃねどね、このツリーハウスを作ることが森作りにも繋がってほしいという気持ちもあって、ツリーハウスを一緒につくる仲間を募集することにしたんよ。
チョッキ
ツリーハウスを作ることが、森を作ることに繋がるってこと?
うーん、一体どういうことなのかなぁ〜
そもそもね、森作りにはたくさんのハードルがあるんよ。
例えば長期的に関わらなきゃいけんかったり、1人ではやれることにも限界がある。そもそも森を持っていないし道具を使う資格だって持っていないことが多いけぇ、僕みたいな林業に関わりのない素人にとって、森と関わることはとてもハードルが高いんじゃいね。
しかも国産材は、安い海外材に押されてしまって需要が落ち込んでいる現状もある。
で、僕たちは何より、森作りが仕事になりにくいというのが森に関わる人が増えていかない原因として大きいのではないかと思っとるんよ。
チョッキ
確かに仕事として成立して生活ができないと、関わるのは難しいよね。
森作りし続けて、自分の生活作れないんなら本末転倒も良いところよ。
ほんま、その通りよね。
僕たちも、間伐材を活用して木製品を商品化しようと動き始めているところだけど、商品を作るとなると、まずは知識と技術が必要になるじゃろ。
幸いシェアビレッジには、技術を教えてくれるタケル君がいてて、機械もたくさんあるからこれ作ってみようと思ったらすぐに試作品ができあがる。
でもこれってかなり恵まれた環境で、1人で木工商品で商売していくにもハードルが高いんよね。
チョッキ
まずは知識や技術を学んで、機械を使える場所が必要だってことか〜
そう!
ツリーハウスのプロジェクトでは自分で家を作るための基礎の部分を学べる講座になっとるけぇ、ツリーハウスを建てながら知識や技術はしっかり学ぶことができる。
そして、ツリーハウスを建てる中で様々な機械を使っていくことになるんじゃが、自分で高い機械を購入する前に、実際に使い心地を確かめられる良い機会になるんよね。
それに、用途に合わせてどんな機械を買えばよいのか相談もできたりする。
それで、さらに問題なのが、1人でできることが限られているということ。
当たり前だけど森って本当に広いんよ。
間伐材が欲しいと思っても、
「木を切り倒す→木材に加工できる長さに木を切り分ける→運ぶ→木材に加工する」
という作業だけでも、1人でやるにはものすごい時間と手間がかかってしまう。
こんな大変なことをしていたら、生活できるようになるまでに時間がかかりすぎるじゃわいね。
じゃけ森作りは、1人ではなくてみんなで協力して進めていく必要があるんよね。
タケル君やわしは、既に森作りに関わっとるけぇ、相談にのれることもあると思う。それに、参加者同士だって、家を作りたいなと気持ちを持って参加してくれとるけぇ、もし将来何かを始めるときには大切なご縁になっていくと思うんじゃわ。
チョッキ
ただツリーハウスを作るだけじゃなくて、その先の森作りの問題点も解決していこってか!にしけん、やるじゃん!
いろいろな想いが詰まったツリーハウスの完成予定は2022年5月。
それまで楽しみ待っとりんさいね!!